経営を「祈り」から「設計」へ ~ 社長の勘を、組織が動く言葉に変える ~
~ 中小企業の社長が知っておくべき『目標・KPI・利益』の考え方|最終回
ここまで、目標・KPI・利益というテーマでお付き合いいただきありがとうございました。
今回は、このシリーズ全体を振り返り、私がお伝えしたかったことを改めて整理させていただきます。
1.「売上はお買い上げ」という原点
このシリーズで私がお伝えしたかったことをもう一度確認したいと思います。
売上とは、売る側が「売る」ことではなく、お客様に「お買い上げいただく」ことです。
どれだけ良い商品でも、お客様にとって価値がなければ買っていただけません。
どれだけ営業員が頑張っても、相手が必要としていなければ売れることはないのです。
気合と根性だけでは売上は上がらない。
この一点をお伝えしたくて、このシリーズを始めました。
では何が必要か。それは、
経営者の経験と勘を言語化し、社員が「何をどれくらいやれば良いのか」を理解できる状態を作ること。
それがKPIという仕組みの出発点だと私は考えています。
2.目標・KPI・利益の全体像
シリーズでお伝えしてきたことを、一本の線でつなぐとこうなります。
まず目的があります。
なぜこの事業をやっているのか。お客様に何を提供したいのか。これが経営の北極星です。
次に目標があります。目的に向かう途中のポイントです。
「売上1億円を目指せ」と社員に発破をかけても、社員はどう動けば良いかわかりません。
「6ヶ月で新規顧客を10件獲得する」のように、
いつまでに何をするかが明確になって初めて、目標は行動につながります。
そして、その目標を達成するためのKeyを見つけ、行動量に落とし込んだものがKPIです。
面談回数、セミナー開催回数、顧客フォロー数。
業種や戦力によってKeyは異なりますが、
「社員が自分でコントロールできる行動」であることが条件です。
そのKPIで行動を積み重ねた先に、売上が生まれます。
売上の構造を理解し、価格と価値を見直すことで、利益が確保できます。
目的 → 目標 → KPI → 売上 → 利益。これがこのシリーズを貫く一本の線です。
3.経営者に伝えたい5つのこと
このシリーズを通じて私がお伝えしたかったことは、大きく5つあります。
①自社の業務工程を分解してください
まず営業プロセスを、最初の顧客接点から受注・販売に至るまで細かく分解してみてください。
分解すると、これまで見えていなかったKeyが見つかることがあります。
固定観念を外して工程を見直すこと、それが最初の一歩です。
②経営者の勘をKPIに変えてください
「これくらいやれば、これくらい売れるはず」
という皆さんの感覚を、数字と言葉に落とし込んでください。
最初から完璧なKPIは作れません。
仮説を立て、実行し、データを見て修正する。このサイクルを回すことで精度が上がります。
③社員と一緒に修正してください
KPIの修正作業に社員を巻き込んでください。
自分たちで考え、決めた目標への当事者意識が生まれます。
考える機会を与えることがリーダー育成の最も効果的な方法です。
報酬よりも、考える場を作ることが人を育てると私は信じています。
④売上の構造を把握してください
売上は客数×購入金額に分解できます。
売上が下がると、新規顧客の獲得に活路を求める経営者は少なくありません。
しかしそれは多くの場合、順番が逆です。
まず既存顧客の流出を止めることを先に考えてください。
そして価格と提供価値が見合っているかを常に見直す。
この順番が、貴社の利益を守ります。
⑤値上げを恐れないでください
値上げできない会社は、顧客に価値を認められていない会社です。
自社の価値を磨き、段階的に、誠実に価格交渉を行ってください。
値上げは「悪」ではなく、会社と社員を守るための経営判断です。
4.「経営は設計である」という結論
5つのことをお伝えしてきましたが、突き詰めると、
私が一番お伝えしたかったことはこの一言に尽きます。
経営は、祈りではなく設計である。
目標が「掛け声」で終わる会社と、目標が「行動」に変わる会社。
その差は、経営者の経験と勘が「設計図」になっているかどうかだと思っています。
設計図があれば、社員は迷わず動けます。
設計図があれば、どこがずれているかがわかります。
設計図があれば、修正できます。
目標を設定し、達成を目指して行動し、達成したときの達成感を何度も経験する。
そんな社員は、将来、会社の優秀な幹部になります。
そして、そういう社員が育つ会社は、経営者が黙っていても成長します。
これは、私が経営に携わってきた会社で、繰り返し見てきたことです。
皆さんが売ろうとしている製品やサービスは、お客様が買いたいと思うものでしょうか。
皆さんの会社はなぜその製品やサービスを売ろうとしているのでしょうか。
その問いへの答えを磨き続けることが、経営者の本当の仕事だと私は思っています。
5.最後に
このシリーズを読んで終わり、にしないでください。
まず一つだけ、今日やってみてください。
自社の業務工程を紙に書き出してみる。それだけで構いません。
書き出す中で、気づくことが必ずあります。
KPIは難しい概念ではありません。
経営者の頭の中にある「これをやれば売れるはず」という感覚を、言葉と数字にすること。
それだけです。
正しいKPIを設定し、社員と一緒に磨き続ける。
その先に、売上と利益が安定した、強い組織があります。
このシリーズがその一助になれば、これほど嬉しいことはありません。
i & Associatesでは、KPIの設計から運用、利益改善まで、経営者と並走しながら支援しています。
ご興味があれば、お気軽にお問い合わせください。


