M&Aや再編後の“設備投資”を東京都が最大4億円助成
──「経営統合等による産業力強化支援事業」の全貌と活用ポイント
◆ 助成金の目的
東京都では、都内製造業の空洞化を防ぎ、地域経済を支える企業の変革投資を支援するため、新たに「経営統合等による産業力強化支援事業」を開始しました。
本制度は、M&Aやグループ再編後に都内で工場建設や設備投資を行う企業を対象とし、最大4億円の助成金が交付される極めて実務的な支援策です。
◆ スケジュール(予定)
- 事前エントリー期間:2025年7月16日(水)〜8月31日(日)
※状況により延長される可能性あり - 申請期間:2025年9月1日〜10月31日
- 申請方法:電子申請(jGrants)
- 要準備:GビズIDプライムアカウント(取得に約1週間)
◆ 対象となる企業・取組みは?
以下の2つの枠組みで募集しています。
【連携枠】(最大4億円・助成率2/3)
都内の中小企業同士が、M&Aや経営統合(株式取得、合併、事業譲渡、会社分割など)を行い、
新たに工場の建設・改修・設備投資を実施する場合。
- ✅ 代表企業と分配企業の役職員の兼務がないことが要件
- ✅ グループ再編でも、名義上別法人+兼務なしであれば対象になり得ます
【単体枠】(最大3億円・助成率1/2)
サプライチェーン上で大きな影響力を持つ中小企業が、単独で大規模な変革(工場建設・業態転換等)を行う場合。
- 例:地域資源を活用した高付加価値製造、新製品開発、工場の大規模刷新など
- 10年以上の都内事業実績、および直近決算が黒字であることが要件
◆ 「連携枠」と「単体枠」の違いを簡潔に比較
比較項目 | 連携枠 | 単体枠 |
---|---|---|
経営統合の要否 | 必須(契約が有効であること) | 不要 |
助成上限額 | 最大4億円(助成率2/3) | 最大3億円(助成率1/2) |
助成下限額 | 1,000万円(経費1,500万円以上) | 5,000万円(経費1億円以上) |
対象企業 | 中小企業間のM&A・合併・再編など | サプライチェーンで影響力ある単独企業 |
要件例 | 役職員の兼務がないこと | 直近黒字/都内で10年以上継続事業実績 等 |
◆ 「連携枠Ⅰ」と「連携枠Ⅱ」の違い
比較項目 | 連携枠Ⅰ | 連携枠Ⅱ |
---|---|---|
助成金の使い方 | 代表企業が単独で受給・使用 | 助成金を複数社で分配・活用可能 |
想定ケース | 完全子会社化・吸収合併後の投資 | 緩やかな資本関係下でのグループ再編・再投資 |
注意点 | 書類・審査が比較的シンプル | 分配企業にも申請・審査要件が課される(兼務禁止) |
◆ 助成対象経費(代表例)
- ✅ 工場建設費(制限なし)
- ✅ 設備導入費(上限5,000万円)
- ✅ 調査費(連携先や市場調査など)
- ✅ 広報費(採用や事業PRに関わる制作物等)
※土地購入費、リース、消耗品、他社との共用物件などは対象外です。
◆ この助成金の活用価値
M&Aや事業承継を経た中小企業では、「買収して終わり」ではなく、その後の統合・再編フェーズでの成長戦略が最大のカギになります。
この助成金は、
- PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)の一環としての設備投資
- 老朽化した工場の建て替え
- 生産能力の拡張や工程の見直し
といった“攻めの再構築”に対して、極めて実践的に使える制度です。