売上が伸びない会社がやっていないこと|「行動できる目標」の作り方
~ 中小企業の社長が知っておくべき『目標・KPI・利益』の考え方|第1回
「うちの社員は本当によくやってくれている。
でも、売上がなかなか伸びない。」
こんな悩みを抱える社長は、少なくありません。
営業員は毎日足を運び、商品の良さを伝え、提案を重ねる。
経営者自身も現場に出て、誰よりも早く動いている。
それでも数字は動かない。
一体、何が足りないのでしょうか。
1.良い商品が売れない理由
企業はさまざまな努力をします。
新しい商品を開発し、
競合が値下げすれば追随し、
営業員は何度も顧客を訪ね、
品質や耐久性をアピールします。
それでも売れない。
インドや東南アジアで、なかなか売れない日本製品が少なくありません。
品質や耐久性は世界一流の水準でも、現地の顧客が求めるものではないからです。
どれだけ良いものでも、相手が必要としていなければ買ってもらえません。
「売上」とは、
売る側が「売る」ことではなく、お客様に「お買い上げいただく」ことです。
お客様が「これが欲しい」と思う商品やサービスを提供すること。
それが売上につながる最低限の条件です。
どれだけ営業員が頑張っても、
お客様にとって価値がなければ、お買い上げいただくことはできません。
2.「気合と根性」では再現できない
私が銀行員だった30年以上前の話です。
支店の売上目標が未達になると、課長からこんな発破がかかりました。
「今日は取れるまで帰ってこなくて良いぞ!」
「また今日も土手で晩飯か」と思いながら、
荒川の土手まで自転車を走らせ、川を眺めながら腹ごしらえをしていました。
週末の夕食時に訪問しても、お客様には迷惑以外の何ものでもない。
そう思いながらも、行かざるを得ない。
課長の言葉は、目標達成に拘る覚悟を持てという意味であることはわかります。
ただ当時から思っていたのは、
「精神論だけでは達成できない」ということでした。
目標を達成するための行動ならば、
その行動が達成につながるという根拠が必要です。
気合と根性に頼った営業は、再現できません。
うまくいっても、なぜうまくいったのかが説明できない。
根拠が説明できなければ、組織は強くなれません。
3.目標は「行動できる形」でなければならない
では、どうすれば良いのか。
ある着物店の話です。
「今月○○万円」という売上目標を掲げても、
社員は何をすればいいかわかりませんでした。
そこで経営者が立てた目標は
「月に2回、無料着付け教室を開催する」
というものでした。
場所はどこにするか、
誰を呼ぶか、
告知はどうするか。
こうしたことは、社員が自分で考え、自分でコントロールできます。
「売上○○万円を達成しろ」と言われた時の「頑張ります」と、
「着付け教室を2回開催しろ」と言われた時の「頑張ります」は、
同じ言葉でも意味がまるで違います。
前者は何をすればいいかわからないまま頑張る、
後者はやるべきことが見えた上で頑張る、
です。
別の会社では、
若手社員が多く提案営業が難しいため、
「機械設備の無料点検を月40社行う」という目標を立てました。
無料点検はお客様に喜ばれ、社員は知識とスキルが身につく。
売り込みではなく、関係を深めることを目標にしたのです。
どちらの目標にも共通しているのは、
社員が自分の力でコントロールできる、
という点です。
4.なぜ「着付け教室2回」なのか
「でも、なぜ2回なのか」と思うかもしれません。
答えは、経営者の経験と勘です。
「着物に触れる機会を増やすことが売上につながる」
「1回では少なすぎ、3回では社員の負担が大きすぎる」
という過去の経験が、2回という数字の根拠になっています。
社長の頭の中には、
「このくらい動けば、このくらい売れるはずだ」
という仮説があります。
それを言葉と数字に落とし込むこと、
つまり「見える化」することが、目標設計の出発点です。
最初から完璧な数字を出す必要はありません。
仮説を立て、実行し、データを取り、修正する。
この循環を回すことで、目標の精度は上がっていきます。
売上目標が達成されない原因は、
社員の能力不足でも、モチベーション不足でもありません。
社長の経験と勘が言語化されておらず、
社員が「何をどれくらいやればいいのか」を理解できていないことです。
5.経営は、祈りではなく設計である
目標が「掛け声」で終わる会社と、目標が「行動」に変わる会社。
その差はどこにあるのか。
それは、社長の経験と勘が「設計図」になっているかどうかです。
ではその設計図を、どうやって作るのか。
なぜ多くの会社では売上目標が達成できないのか。
次回は、目標と行動がつながらない本当の理由を掘り下げます。
✅次回予告 ~ 売上目標が毎月未達になる会社の共通点|目標設定の「構造的欠陥」を直す
次回は、売上目標が毎月掲げられているのに達成できない構造的な理由と、
「目標を行動に翻訳する」ための考え方を整理します。



