KPIはなぜ機能しなくなるのか~ KPIを生きた仕組みにする運用法

~ 中小企業の社長が知っておくべき『目標・KPI・利益』の考え方|第7回

ここまで、KPIの設計方法と事例を整理してきました。
KPIを作れば、社員は「今日何をすべきか」が明確になります。

しかしKPIは作って終わりではありません。
むしろ作った後の運用こそが、組織の質を決めます。

1.KPIを作ったら、仮説は完成

Keyを見つけ、KPIを設定できれば、売上倍増に向けた取り組みの9割は完成。
残りの1割は、KPIの修正と再設定です。

企業が売上を上げるまでのステップはこうなります。

  • Step1:事業の目的を達成する目標を設定する
  • Step2:経営者の経験と勘でKeyを決め、KPIを設定する
  • Step3:設定したKPIに基づいて営業活動を実施する
  • Step4:営業活動で得たデータを蓄積し検証する
  • Step5:検証の結果で、必要に応じてKPIを修正する

多くの経営者は、Step2(KPIの設定)で止まります。
KPIを設定したことに満足してしまい、データの検証やKPIの修正に進まない。
しかしKPIの本当の価値は、このサイクルを回し続けることにあります。

2.仮説は外れて当然、だから修正する

KPIを設定して営業活動を行うと、さまざまなデータが集まります。

たとえば受注1件に26回の面談が必要と仮定したのに、
実際には30回必要だった。あるいは15回で十分だった。
工程自体に漏れがあり、見直すと別のKeyが見つかることもあります。

こうした「ずれ」が出るたびにKPIを修正します。
そして、修正した新しいKPIに基づいてまた営業活動を繰り返す。
その繰り返しでKPIの精度が高まり、目標達成に近づいていきます。

最初から完璧なKPIは作れません。
仮説を立て、実行し、データを見て修正する。
このサイクルを回すこと自体が、組織を強くするプロセスです。

3.修正は社員と一緒に

KPIを最初に設定するのは経営者の役割です。
しかしデータを収集しKeyやKPIを修正する作業は、社員と一緒に行います。

社員がKPIの修正に関わることで、2つのことが起きるからです。

一つは、自分たちが決めた目標への当事者意識が生まれること。
上から与えられた目標ではなく、
自分たちが考えて作った目標では、達成への意欲が変わります。

もう一つは、社員の考える力が育つことです。
「実績数字を検証し次の戦略を考える」という仕事を社員に任せれば、
経営への参加意識が高まり、次世代のリーダーが育ちます。

KPIの修正サイクルは、組織の学習サイクルでもあるのです。

4.最後は気合と根性も必要

ここまで「気合と根性だけでは売上は上がらない」と言い続けてきましたが、
最後に一つ付け加えます。

KPIを達成するためには、最終的には気合と根性が必要です。
ただし、それは「闇雲に頑張れ」という話ではありません。

月に50社訪問するというKPIを立てたのに、
月末近くになってもまだ40社しか訪問できていない。
そうすると、
残り日数でどの様に10社を回るかを考え、
強い意志を持って実行する必要があります。
そこには、「やりぬく!」という気持ち。気合と根性が必要です。

根拠のある目標に対して、数字にこだわり抜く。
その姿勢が社員に根付けば、経営者が黙っていても業績は上がります。

目標を設定し、達成を目指して行動し、達成したときの達成感を何度も経験する。
こうした社員は、将来、会社の優秀な幹部になります。

5.固定観念がKeyを見えなくする

KPIを修正する際、「このやり方しかない」という固定観念は邪魔にしかなりません。

ここで、心理学者のカール・ドゥンカーが1945年に行った実験を紹介します。

テーブルの上にマッチ、箱に入った画鋲、ロウソクが置かれています。
これらを使って、テーブルに蝋が垂れないようにロウソクを壁に取り付けてください。
さて、どうやって取り付けますか。

なかなか難しいですよね。
画鋲でロウソクを壁に刺そうとしても無理。
蝋を溶かして壁にくっつけようとしてもうまくいかない。

では次の図を見てください。

先ほどと何が違うか。
画鋲が箱の外に出ているだけです。
たったこれだけのことで、正解に気づく人が大幅に増えます。

さてこの答えは、

箱をロウソク立てとして使えることです。

最初の図では
「箱はモノを入れるもの」という固定観念が、解決策を見えなくしていました。

しかし画鋲を外に出して分解してみせるだけで、
箱が独立したアイテムとして見え、答えにたどり着ける人が増えるのです。

この実験には、経営者にとって2つの教訓があります。

一つは、経営者自身が固定観念を持たないこと。
「うちの業種ではこれがKeyに決まっている」という思い込みが、
本当のKeyを見えなくします。

もう一つは、
社員が考えやすいように、物事を分解して見せてやることの大切さです。

売上をあげるという複雑な問題も、
工程に分解して社員の前に並べてやることで、
社員は自分でKeyを見つけ、答えを出せるようになります。

経営者の仕事は答えを与えることではなく、
社員が考えられる状態を作ることでもあるのです。

(参考:Daniel H. Pink「やる気に関する驚きの科学」TED.com)


✅次回予告

次回は「社員はお金で動かすな」というテーマを掘り下げます。
モチベーションと報酬の関係について、
心理学の実験から見えてくる意外な真実を、KPIの運用に活かす方法を整理します。

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