【PMI実務Q&A】第7回 ~ M&A後に従業員が反発、どう対応すべきか(業務プロセス編)

― 新しいルール・やり方を導入するときの“実務ポイント” ―

質問7:

当社は今年、ある企業をM&Aで買収しました。
買収後に業務の進め方やルール、報告方法を整理しようとしたところ、管理職や社員から強い反発があり、困っています。

こちらとしては、グループ全体の基準に合わせて業務を効率的に回したいのですが、
「急にやり方が変わると手間がかかって非効率」
「特に問題もないのに、なぜ変える必要があるのか」
といった声が多く、前に進めません。

M&A後、従業員がこのように反発する場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。

M&A後の現場で起きやすいトラブルが、「新しいやり方・ルール」への反発です。

特に、社歴の長い従業員にとって、これまでのやり方を変えることは、
“自分の負担が増えること” と感じられるため、抵抗が生まれるのは当然の反応です。

ここでは、統合初期に特に重要な 3つの現実 と、統合を前に進めるための 3つの実務ポイント を整理します。


1.最初から全部を変えようとしない

(1)中小企業では“属人化”が当たり前 ― 反発は正常な反応

多くの中小企業では、業務が特定の人に深く依存し、その人のやり方そのものが業務の標準になっています。

  • 少人数で長年同じ仕事をしている
  • 引継ぎ文化がない
  • マニュアルが存在しない
  • 経験と慣れで成立している

この状態で仕事をしてきた人たちが、突然、「やり方を変えます」と言われれば、
“今より面倒になるのでは” という不安が生まれ、反発が起きるのは自然なことです。


(2)統合には“優先順位”がある

PMIの初期は、まだ買収先の業務プロセス全体を深く理解できていません。
そもそも、相手企業のやり方には、それが成立してきた“理由”があります。

ですから、この段階で、

  • 報告フォーマット
  • 稟議フロー
  • 営業プロセス
  • 製造現場の記録
  • 経理のExcelシート

などを一気に自社流に統一しようとすると、混乱と反発、そして失敗を招きます。


(3)“重要度 × 緊急度”で整理し、最小限の範囲から着手する

統合作業は、
重要度・緊急度・変更によるリスク の3つを軸に整理し、
最小限の領域から段階的に着手することが基本です。

特に優先すべきは、下記の領域です。

  • 安全に直結する領域(事故リスク)
  • 品質に直結する領域(不良・クレームのリスク)
  • 数字のずれが将来の大きな損失につながる領域
    (売上計上、在庫管理、案件管理・営業見込み 等)

これらは、放置すると事業に大きな支障が出るため、統合の優先度が最も高くなります。


2.反発を抑え、統合を前に進めるための3つのポイント

(1)まず “なぜ変えるのか” を丁寧に説明する

従業員が納得しない理由は、まず、なぜ変えなければならないのかがわからないからです。

そこで経営者は、何より先に “変える理由” を説明する必要があります。

  • 従業員の安全・品質を守るため
  • 経営判断の精度を上げるため
  • 将来の事業成長に必要な管理レベルを整えるため

こうした “会社が次のステージに進むための理由” を明確に示すことで、
「変えることに、一定の理解を得る」ことはできるはずです。

ただし、従業員は理解はしても納得はしません。自分の負担が増えるのですから。

だからこそ、次のステップが重要です。


(2)新しいやり方で“楽になる実感”をつくる

会社にとって合理的でも、従業員にとって自分の仕事が大変になると思えば、なかなか前には進みません。

そこで、変更によって

  • 手戻り・確認作業が減る
  • 顧客対応のムダが減り、クレームも減る
  • 製品品質が安定し、自分たちが楽になる
  • 経営の安定 → 処遇改善や投資余力につながる

といった メリット を丁寧に説明し、「変えるのも仕方ないか」と思える状態をつくります。


(3)サポートを用意する ― 安心できる環境の提供

更に、新しいやり方に慣れてもらうには、環境づくり が必須です。具体的には、

  • 個別説明
  • 一緒にやりながら慣れる移行期間
  • 必要最低限のシンプルな手順書(完璧でなくて良い)
  • すぐ質問できるサポート窓口

こうした環境を整えるだけで、現場の不安はかなり減るはずです。


3.反発の正体は“漠然とした不安”

従業員は、会社に逆らいたいわけではありません。

  • 変更する理由が不明
  • 自分の負担が増えることに対する不安
  • 新しいやり方へ対応することへの自信不足

こうした “漠然とした不安”こそが反発の正体 です。

だからこそ PMI初期では、

  • 優先順位を決めて段階的に着手し
  • 理由を丁寧に説明し
  • 現場にメリットを実感してもらい
  • 移行期間は伴走する

という4つの流れが極めて重要です。

これが整うと、現場の反発は確実に減り、PMIを前に進めやすくなります。

※次回(第8回)は、業務の問題ではなく、
「不信感」「不満」「漠然とした不安」による“感情の反発”について詳しく取り上げます。


✅ 次回予告
第8回~M&A後に従業員が反発、どう対応すべきか(感情・信頼関係編)

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