売上目標を「行動」に翻訳する方法 ~ KGI・KSF・KPIの整理で営業は動き出す
~ 中小企業の社長が知っておくべき『目標・KPI・利益』の考え方|第4回
「今月は売上1,000万円だ」
「なんとかあと3件取れないか」
「とにかく受注を増やせ」
そう発破をかけたとき、現場の営業は本当に動いているでしょうか。
月末に値引きで帳尻を合わせていないでしょうか。
案件を無理やり前倒しして、翌月さらに苦しくなっていないでしょうか。
心当たりがある方、
それは営業員の考えが甘いからではありません。
組織として、「結果」と「行動」の考え方が理解されていないことが原因です。
ここまで、
売上は分解できること、分解しなければ行動にならないことを整理してきました。
今回は、その分解をKGI・KSF・KPIという枠組みで整理し、
具体的な計算例を通じてKPIの作り方を見ていきます。
1.KGIとは何か ――それは"結果"である
KGI(Key Goal Indicator)とは、最終的に達成したい業績目標です。
売上○○万円、営業利益○○万円、顧客数○○社。
これらはすべてKGIと呼ばれるべきものです。
ここで重要なのは、
KGIは「動いた結果」であって、「動き方」ではないということです。
売上は努力の「結果」です。
直接コントロールできる数字ではありません。
しかし多くの組織では、この結果指標をそのまま現場に目標として渡します。
すると何が起きるか。
営業は、結果を作るために構造を"いじり"始めます。
値引きで利益構造を削る、
前倒し受注で月次構造を歪める、
無理な契約で信頼構造を傷つける。
本来、目標が達成できない時に変えるべきは行動の構造なのに、
目先の数字を達成するために、構造そのものを壊してしまう。
KGIをそのまま目標としたとき、こういうことが起こってしまいます。
2.KSFとは何か ――構造を左右する指標
では、売上という結果を生む構造とはどんなものでしょうか。
その構造を左右する指標をKSF(Key Success Factor)と呼びます。
顧客との面談回数、
提案回数、
見積提出数、
既存顧客のリピート率。
これらはすべて、売上を左右する行動であり、要素となるものです。
例えば、面談回数や提案回数は、自分が動けば増やせます。
リピート率は行動の結果であり、直接動かせる数字ではありません。
リピート率を動かすには、
・導入後フォロー実施率
・定期接触回数
・クレーム初動対応時間
といった行動できるところまで分解する必要があります。
このように、
KSFと呼ばれるものの中にも「行動に近いもの」と「まだ構造段階のもの」があります。
ここを見誤ると、営業は動けません。
3.目標は「3つの階層」に分かれる
売上目標を「結果」から「行動」まで落とすには、
数字を構造で捉える必要があります。
数字は、3つの階層に分かれます。
第1層がKGI(最終成果)で、売上・利益です。
動かせない「結果」です。
第2層が構造指標で、成約率・リピート率・単価です。
まだ直接は動かせない「状態」です。
第3層がKPI(行動指標)で、訪問数・提案数・フォロー回数です。
今日、自分が動けば変えられる「行動」です。
多くの会社は第1層を営業目標にします。
少し進んでいる会社でも、第2層で止まります。
「成約率を上げろ」「リピート率を改善しろ」
しかしこれでは営業は動けません。
第2層は、さらに第3層まで分解して初めて行動に翻訳されるのです。
4.KPIの設計例①――面談回数をKeyにする場合
では実際にKPIを設計してみましょう。
ある会社の月間売上目標が10百万円、平均受注単価が1百万円だとします。
必要な受注件数は10件です。
10件の受注には26回×10件=260回の面談が必要です。
営業員が2名いれば、1人あたり130回が個人のKPIになります。
業務工程を分解すると、
面談から提案・引合いに至る歩留まり率が30%、
提案から見積もりへが40%、
見積もりから内定が40%、
内定から受注が80%です。
これを逆算すると、
受注1件を獲得するために必要な面談回数は理論上26回になります。
「今月は売上10百万円」という目標が、
「今月は顧客と130回面談する」という行動レベルの話に変わります。

5.KPIの設計例②――提案回数をKeyにする場合
Keyは面談回数だけではありません。
業種や営業スタイルによって、何がKeyになるかは異なります。
次は法人向けに商材を販売する会社のケースです。
この会社では、お客様への提案回数が売上達成のKeyと考えています。
業務工程を分解して歩留まり率を計算すると、
受注1件を取るためには7.8件の提案が必要であることがわかりました。
平均単価が1百万円、月間目標が10百万円だとすると、10件の受注が必要です。
1件の受注に7.8件の提案が必要なので、10件の受注には78件の提案が必要になります。
営業員2名で分担すると、1人あたり39件の提案が月次KPIになります。

同じ売上目標でも、Keyが「面談回数」か「提案回数」かによって、
KPIの数字もその中身もまったく異なります。
自社の営業プロセスのどこにKeyがあるのかを見極めることが、KPI設計の核心です。

6.分解しない組織ほど、管理したがる
KPIが設定されていない組織では、ある現象が起きます。
管理表が増える、
週次資料が増える、
赤字が並ぶ、
会議が長くなる。
しかし行動は変わらない。
分解しない組織ほど、管理したがるものです。
でも本当に必要なのは管理ではありません。
構造を行動に落とすことです。
KGI・KSF・KPIの整理は用語の問題ではありません。
数字を行動に翻訳すること。
売上を追うのではなく、構造を動かす。
構造を動かすために、今日の行動を決める。
そのための整理がKGI・KSF・KPIなのです。
✅次回予告
次回は、KPIの考え方を実際に活かして組織を変えた事例を紹介します。
アジアで業界No.1になった機械設備メーカー、地域に根ざした葬儀社、一般小売店。
業種も規模も異なる3社のKPIから、Keyの見つけ方を学びます。


