米は騒ぐのに、なぜガソリンは騒がないのか
原油価格が半分に下がったのに…?
2022年6月、WTI原油価格は1バレル120ドルを超え、全国平均のガソリン価格は170.8円/Lに達しました。
それから3年――2025年現在、原油価格は60ドル前後とほぼ半分になっています。
それにもかかわらず、2025年5月19日時点での全国平均のレギュラーガソリン価格は177.9円/L、毎週、少しずつ下がっていますが、ほぼ180円前後で高止まりしたままです。
……なぜなんですかね?
もちろん、円安の影響(130円/ドル → 145円/ドル)はあるでしょう。
でも、それを差し引いてもここまで下がらないのは不思議です。
ガソリン価格の内訳は?
ざっくり言えば、こんな構成です:
- 原油仕入価格(国際価格 × 為替)
- 精製・輸送・販売マージン(元売・販売業者の利益)
- 税金
└ ガソリン税:53.8円/L
└ 地方揮発油税:5.2円/L
└ 消費税(10%)
このうちガソリン税+地方揮発油税(合計59円/L)は固定。
消費税だけが価格に応じて変動します。
今のガソリン価格が180円/Lだとすると、税抜本体価格は約104.6円です(180円÷1.1-59円で計算した推定値)。
原油価格と為替を加味した「理論価格」とは?
2022年→2025年の間に…
- 原油価格:120ドル → 60ドル(50%下落)
- 為替:130円/ドル → 145円/ドル(円安)
→ つまり、円建て原油価格は 15,600円 → 約8,700円(約44%下落)
2022年の推定本体価格104.6円が44%下がると、
104.6円 ×(1−0.44)= 約58円
ここに固定税59円を加えて、
58円 + 59円 = 117円
→ さらに消費税10%を加えると ⇒ 約129円/L
つまり、理論的には129円/Lくらいになっていても不思議ではないんです。
それでも価格が下がらないのはなぜ?
もちろん、コストが原油と為替だけで決まるわけではありません。
- 人件費や輸送費、エネルギーコストの上昇もある
→ でも全体の10〜15%程度。仮に20%上がっても数円レベルの話です。
「燃料油価格激変緩和補助金」の影響は?
2022年、原油価格が高騰した際、政府こんな制度を用意しました:
卸売価格が一定基準(例:168円/L)を超えると、元売に補助金が出る
でもこの補助金は、
- 「価格を下げる」ためのものではなく
- 「急騰を抑える」ためのもの
つまり、元売が小売価格を下げても補助金が減るだけなんです。
卸価格が168円を下回ると補助金打ち切り
→ 元売としては「下げると損」な構造
いやいや、まさかとは思いますが…
「補助金をもらうために、元売企業がわざと価格を高止まりさせてる」なんてこと……ないですよね?
ちょっと元売企業の業績を見てみましょうか
- ENEOS(エネルギー部門)
→ 前年比1,020%の増益(在庫影響除く営業利益:162億円 → 1,813億円) - 出光興産(燃料油部門)
→ 前年比128%の増益(在庫影響除く利益:732億円 → 1,672億円)
えっ、原油は半額になったのに、利益は過去最高?しかも、前年比、尋常じゃないぐらい儲かってる……
私たちが払っている「差額」はどこに?
- 理論価格:129円
- 実際の価格:180円
→ 差額は約50円/L
車社会の地方都市の走行距離から算出した車一台当たりのガソリン使用料は月間60L程度、家族3人なら、毎月180L使うことになる。
すると、50円の差額は:
- 月9,000円
- 年間10.8万円の負担増となっているわけです。
米の値上げは毎日ニュースになるのに…
「米が高い!」と連日取り上げられます。
でも、ガソリン価格の高止まりの方が生活への影響は大きくないですか?
それとも、ENEOSや出光がテレビCMをたくさん出してるから…
メディアはあまり突っ込めないのでしょうか?
いや、さすがにそんなことは……
ないと、信じたいですけどね。