【PMIとは何か】M&A成功の鍵は「業務統合」だけではない
―「業務統合だけ」だと思うと、M&Aはうまくいかない ―
M&Aを実行したものの、
「思ったほど成果が出ない」「現場が混乱した」「人が辞めてしまった」
――こうした声の多くは、PMI(Post Merger Integration)に原因があります。
PMIとは何か。なぜ、M&Aの成否はPMIで決まるのか。
本記事では、PMIを単なる「業務の統合」だと誤解したまま進めることで、
中小企業のM&Aが失速してしまう構造を整理します。
これまで本ブログでは、「PMI実務Q&A」として、
現場でよく寄せられる個別の論点について解説してきました。
今回からは、そうしたQ&Aの背景にある
「PMIとはそもそも何か」
「なぜPMIが誤解されやすいのか」
といった全体像について、あらためて整理していきます。
PMIは「業務の統合」だと思われがちだが、それは一部にすぎない
PMIとは、M&A成立後に行われる経営統合プロセスのことです。
実際に中小企業のM&Aの現場で「PMIをやっている」という話を聞くと、
多くの場合、議論の中心は次のような内容に集約されます。
- 営業シナジーをどう出すか
- クロスセルをどう進めるか
- 製造や品質をどう効率化するか
- バックオフィスをどう統合するか
これらはいずれも前向きで、合理的で、決して間違った取り組みではありません。
ただし、ここに一つ大きな誤解があります。
PMI=業務の統合
だと思われてしまっていることです。
PMIとは「意識・経営・業務」を統合するプロセスである
PMIは、本来、次の3つを同時に扱うプロセスです。
- 意識の統合
- 経営の統合
- 業務の統合
業務の統合は、
営業・製造・管理など、日々のオペレーションを整えることです。
一方で、意識の統合や経営の統合は、
目に見えにくく、後回しにされがちな領域です。
しかし、PMIの成否を左右するのは、むしろこの2つです。
PMI成功のカギ:経営・業務・意識の3つの統合

※「意識の統合・経営の統合・業務の統合」の関係を示した図(著者作成)
この図が示している通り、
PMIにおいて業務の統合は、あくまで一要素にすぎません。
- 意識の統合:価値観や考え方、目指す方向性を揃えること
- 経営の統合:ガバナンス、意思決定系統、戦略を設計すること
- 業務の統合:現場のやり方やプロセスを整えること
多くのPMIがつまずくのは、
業務の統合だけが先行し、意識と経営の統合が置き去りにされるからです。
PMIは「並行して」進む。だからこそ設計が重要になる
現実のPMIでは、業務の統合は止められません。
M&A直後から、現場ではどんどん進んでいきます。
重要なのは、
業務の統合を進めながら、
意識の統合と経営の統合を
並行して設計・実行すること
です。
業務だけをどんどん前に進め、
その前提となる価値観や、会社としての運営ルールを整えないままでいると、
組織は次第に歪み始めます。
PMI 3つの統合領域(フェーズ別の経営判断ポイント)抜粋

※Phase0〜Phase3でPMIを整理した図(いわゆる100日プラン)(著者作成)
この図は、
「意識の統合」「経営の統合」「業務の統合」を時間軸で具体化したものの一例です。
PMIはよく「100日プラン」と言われますが、
重要なのは、100日をどう分解し、どんな順番・どんな並行関係で進めるかです。
- Phase0:(最終契約前)
相互理解、目指す姿の整理 - Phase1(Day1):
メッセージの統一、方向性の明確化 - Phase2(〜30日):
ガバナンス・意思決定系統の設計 - Phase3(〜100日):
戦略・KPI・業務への落とし込み
業務の統合だけを先行させると、
後から必ず、組織の混乱として跳ね返ってきます。
会社規模や業種によって、PMIの重点は変わる
もちろん、すべてのM&Aで同じレベルのPMIが必要なわけではありません。
従業員が5人、10人規模の企業同士であれば、
意識や経営の統合を形式張って行う必要がないケースもあります。
一方で、
- 規模が大きい
- 業種が異なる
- 拠点が分散している
こうしたM&Aでは、
意識の統合と経営の統合を意図的に設計しなければ、PMIは必ずつまずきます。
重要なのは、
自社の規模や状況に応じて、PMIの重点を見極めることです。
PMIとは、価値観を揃え、運営を設計し、業務を進めるプロセス
本稿でお伝えしたかったのは、
PMIとは単なる作業の集合体ではない、という点です。
意識を揃え、
経営の仕組みを設計し、
その上で業務を統合していく
この関係性を誤ると、
どれだけ正しい業務施策を積み上げても、M&Aは期待した成果につながりません。
次回は、
「初めてPMIに関わったとき、なぜ意識の統合の重要性に気づいたのか」
という実体験をもとに、
- PMIをどう進めるべきか分からなかった話
- コンサルの助言に驚いた話
- その後のM&Aや新会社立ち上げで再現できた理由
を整理します。
PMIは、経験して初めて腹落ちすることが多い分野です。
その「気づき」のプロセスを、次回は共有します。


