売上は「構造」である ~ KPIは逆算と検証で定まる

~ 中小企業の社長が知っておくべき『目標・KPI・利益』の考え方|第3回

前回、目標は「コントロール可能な行動」でなければならないと整理しました。

では、その行動はどう決めるのでしょうか。
ここが曖昧なままでは、KPIは思いつきの数字で終わります。

今回は、売上をどう分解し、どう逆算し、どう検証するのかを整理します。

1.売上は分解できる

売上は偶然生まれるものではありません。
多くの業種で、売上は次のように分解できます。

売上 = 客数 × 単価

客数 = 接触数 × 成約率

したがって、

売上 = 接触数 × 成約率 × 単価

売上は「結果」ですが、分解すれば「構造」になります。

売上が未達だったときに見るべきなのは、

接触数が足りなかったのか、
成約率が低かったのか、
単価が下がったのか、

という構造のどこが動かなかったのかです。

「数字が足りなかった」という言葉は説明ではありません。
構造を見て初めて、改善の方向が定まります。

2.分解できれば、逆算できる

問題は、売上目標が分解されていないことです。

まずは売上を構造に分けること。
そのうえで必要な数字を逆算すること。
そして、それを行動に落とし込むこと。

この順番を踏まなければ、目標は具体的な動きにつながりません。

具体的に計算してみましょう。

たとえば、
月間売上目標が10百万円の会社で、平均受注単価が1百万円だとします。

まず必要な受注件数は10件です。

次に、受注に至るまでの業務工程を分解します。

面談から提案・引合いに至る確率(歩留まり率)が30%、
提案から見積もりへの歩留まり率が40%、
見積もりから内定が40%、
内定から受注が80%だとすると、

受注1件を獲得するために必要な面談回数は、逆算すると理論上26回になります。

10件の受注には、26回×10件=260回の面談が必要です。

KPI:顧客面談回数 260回

営業員が2名いれば、1人あたり130回が個人のKPIになります。

このように分解できると、

「今月は売上10百万円」という目標が、
「今月は顧客と130回面談する」という行動レベルの話に変わります。

ここまで落とせて初めて、
社員は「何をどれくらいやればいいのか」が見えてきます。

なお、面談から最終受注までの歩留まりは業種によって大きく異なります。

B2B営業の実態データを見ると、
接触段階での歩留まりは1〜3%程度、
商談化後のクロージングは20〜30%程度というのが一つの目安です。

自社の数字がこの水準に対してどう位置するのかを把握するだけでも、
どのプロセスに課題があるかが見えてきます。

目標は、追いかける数字から、積み上げる行動に変わるのです。

3.仮説は社長の経験値から始まる

この話をすると、多くの社長からこう言われます。

「うちにはデータがないからさ。」

確かに、整ったデータはないかもしれません。
しかし、どんな会社にも元となるものがあります。
それは、社長の経験値です。

これまでの営業経験。
顧客とのやり取り。
成功事例と失敗事例。

その積み重ねが、
「このくらい動けば、このくらい売れるはずだ」
という社長の感覚をつくっています。

まずは、その経験値を数字として仮置きする。

歩留まり率30%、成約率20%、単価10万円。
それで構いません。

ただし、それはあくまで仮説です。

4.仮説は外れて当然である

最初から正しい数字を置こうとする必要はありません。

仮説から始める。
実行する。
結果を測る。
ずれを把握する。
修正する。

この循環によって、数字の精度は上がっていきます。

たとえば、
先ほどの計算で受注1件に必要な面談回数を26回と仮定したとしても、
実際にやってみると30回必要だった、あるいは15回で良かった、
というケースは当然出てきます。

また工程自体に漏れがあり、見直すと別のKeyが見つかることもあります。

仮説が外れたとき、組織は二つに分かれます。

「やっぱり違った」と言ってやめる組織と、
「なぜ外れたのか」「どこが想定と違ったのか」と考える組織。

差はここで生まれます。

5.KPIは検証の結果、定まる

重要なのは、
仮置きした数字はまだ完成形ではないということです。

社長の経験値から置いた歩留まり率や接触数は、
「売上を動かしているはず」と仮置きした要素です。

しかし、それが本当に成果を左右しているかどうかは、
実行してみなければ分かりません。

実行する。結果を測る。想定とのずれを見る。

その検証を通じて、実際に成果を左右している要素が見えてきます。
そうやって初めて、その指標は
KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)になります。

KPIとは、最初から決めるものではありません。

仮説を置き、
実行し、
検証した結果、

「ここが重要だ」と確認された指標です。

6.売上は設計できる

売上は結果です。

その結果は分解すれば、

売上=客数×単価、客数=接触数×成約率、

という構造に整理できます。

この構造をもとに、仮説を置き、行動し、検証し、修正していく。

売上を願うのではなく、売上を構造として設計する。
こうして、経営は社長の勘から構造へと変わっていきます。


✅次回予告

次回は、KPIが"管理"になってしまう落とし穴、
KPIを"自律"に変える運用方法、KPIと利益の接続を整理します。

KPIは設計するだけでは不十分です。
どう運用するかで、組織の質が決まります。

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