なぜ売上目標は、いつも達成できないのか~「目標」と「行動」がつながらない本当の理由

~ 中小企業の社長が知っておくべき『目標・KPI・利益』の考え方|第2回

「今月の売上目標は、○○万円です」

多くの会社で、毎月のようにこの言葉が掲げられています。
しかし、その目標が当たり前のように達成され続けている会社は、決して多くありません。

月初は気持ちが入る。
月中になると、少し雲行きが怪しくなる。
月末には、「今回は仕方ない」という空気が漂う。
そして翌月、また新しい目標が掲げられる。

この繰り返しに、心当たりのある社長も多いのではないでしょうか。

1.なぜ目標は、達成できないのか

売上目標が達成できない理由を聞くと、多くの社長はこう答えます。

市場環境が厳しい
景気が悪い
人手が足りない

もちろん、それらが影響している場合もあります。

しかし、現場を丁寧に見ていくと、もっと根本的な原因が見えてきます。

それは、
目標が「行動につながる形」になっていないという点です。

「今月は売上○○万円」

この数字自体は間違っていません。
問題は、その数字を見たときに、現場の社員が

何を
どれくらい
どのように

やればいいのかが、明確になっていないことです。

結果として、目標は掲げられているのに、日々の行動は先月とほとんど変わらない。
これでは、達成できないのも当然です。

2.売上は「プロセスの最後」に現れる数字である

ここで、売上の構造を冷静に整理してみましょう。

売上は、次のプロセスの最後に現れます。

行動 → 反応 → 意思決定 → 購入

社員が電話をかける(行動)
顧客が話を聞く(反応)
顧客社内で検討される(意思決定)
最終的に発注される(購入)

この最後に現れる数字が「売上」です。

では、この4つのうち、社員が直接コントロールできるのはどこでしょうか。

  • 行動はコントロールできる
  • 反応は相手次第で、直接はできない
  • 意思決定は顧客側の判断であり、直接はできない
  • 購入は最終判断であり、直接はできない

社員が確実に握れるのは「行動」だけです。

にもかかわらず、目標として掲げているのが、
プロセスの最終段階である「顧客の購入金額(売上)」だけを目標にすると、現場は迷います。

行動量を増やすべきなのか。
提案内容を変えるべきなのか。
顧客層を変えるべきなのか。

改善すべき箇所が特定されないまま、
「とにかく頑張る」という方向に流れていきます。

これが、目標が“掛け声”になる構造です。

3.目的と目標が整理されていない会社の問題

もう一つ、見逃せない問題があります。
それは「目的」と「目標」の混同です。

売上を伸ばす。
利益を増やす。

これらは重要ですが、それ自体は「目的」ではなく、結果です。

本来の目的とは、

なぜこの事業をやっているのか
どんな価値を提供したいのか
誰に、何を届けたいのか

という意思の部分です。

目的が言語化されていないまま、
いきなり売上目標の数字だけが置かれると、
目標は単なるノルマになります。

ノルマは、やらされ感を生みます。
やらされ感は、短期的な数字合わせを生みます。
その結果、組織は疲弊します。

第1回で触れた
「社長が一番頑張っている会社」になってしまうのは、この延長線上にあります。

4.目標は「コントロール可能な行動」であるべき

ここまで見てきたように、
売上は社員が直接コントロールできる数字ではありません。

売上は、

行動 → 顧客の反応 → 意思決定 → 購入

というプロセスの最後に現れる結果です。

社員が直接コントロールできるのは、
この最初の「行動」だけです。

にもかかわらず、
目標として掲げているのが「売上」という最後の数字だけだと、
現場はこうなります。

もっと頑張る
もっと動く
とにかく案件を追う

しかし、それが成果につながる保証はありません。

なぜなら、
コントロールできない数字を目標にしているからです。

目標は、本来こうあるべきです。

やり切れば、必ず達成できるもの。

たとえば、

  • 無料点検を40社行う
  • 新規電話を200件かける
  • 既存顧客に月2回訪問する

これらは外部環境に左右されません。
やったか、やっていないかが明確です。

つまり、社員には、
自分の努力で完遂できる指標が必要なのです。

では、その「行動できる指標」をどう設計するのか。

ここで重要になるのが、KPIという考え方です。

KPI(Key Performance Indicator)は、
日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。

しかし本質は、
売上という最終結果に至るまでのプロセスの中で、
成果を左右する“鍵となる行動”を特定し、
それを数値化することにあります。

売上を目標にするのではなく、
売上を生む行動を目標にする。

この転換がなければ、
目標はいつまでも「掛け声」のままです。

KPIとは、
目標を精神論から設計図へと変えるための枠組みなのです。

5.社長の頭の中を構造化する

社長の頭の中には、

「このくらい動けば、このくらい売れるはずだ」

という仮説があります。

それを、

  1. 工程に分解し
  2. 歩留まりを仮置きし
  3. 必要行動量を逆算する

この作業を通じて、目標は「祈り」から「設計」に変わります。

最初からこの作業を完璧にしようとする必要はありません。

仮説を立て、実行し、データを取り、修正する。
この循環こそが、組織を強くします。

売上目標が達成されない原因は、
社員の能力不足でも、モチベーション不足でもありません。

売上という「結果」と、現場がコントロールできる「行動」が
論理的につながっていないこと。

ここをつなげるための設計思想が、KPIです。

目標を「掛け声」から「判断基準」へ。
そして「設計図」へ。

ここから、組織は変わります。


✅次回予告

次回は、

・売上をどう工程分解するか
・歩留まりをどう置くか
・KPIをいくつに絞るべきか

具体的な設計手順を整理します。

経営は、祈りではなく設計です。

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